「KSL Live World 2018」に行ってきた

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5月6日、ゲームブランド・Keyの楽曲が披露されるライブの今年度版、「KSL Live World 2018 ~Summer Pockets & Key's Best Night~」に行ってきた。(公式サイト

「神イベント」とはこのことか、と思った。

今年は新作ゲーム『Summer Pockets』が発売される(完全新作としては『Rewrite』以来だから、実に7年ぶりだ)。樋上いたる都乃河勇人という、『Rewrite』の中心人物だったスタッフが抜け、麻枝准氏も大病を患い戦線を離れた、という状況で制作がスタートした『Summer Pockets』。だからこそ、残されたスタッフが「Keyとは何か」ということを真摯に考え、結果的に「最もKeyらしい」作品になるのではないかと期待しているのだが……はたしてこの日のライブは、そんな期待に応えるかのような、「Keyとはこれだ」というものを、存分に見せつけてくれるライブであった。

以下、各演者ごとに、演出の内容も交えながら振り返っていく。

 

・ステージは2段構成になっており、階段上に映像のモニターが。歌い手さんは2Fから登場するパターンと1F舞台袖から登場するの2パターン。左右には神殿の柱風のオブジェと、『サマポケ』ヒロインのイラストが。

・冒頭、『AIR』の夏の記憶と『サマポケ』の夏の記憶をつなぐようなポエム+映像の演出あり。

 

鈴木このみ

・アルカテイル

開幕はやはりこの曲でしょう。「歩き続けることでしか残せないものがあるよ」という歌詞は、Keyの現在地を示すようできわめて感動的。

 

Ayasa(ヴァイオリニスト・インストカバー)

・Last Desire
・theme of SSS
・青空

海外のアニメイベントで演奏しているのを観た馬場社長が出演依頼したらしい。「theme of SSS」がよかった。

 

Lia

鳥の詩
・Light Colors
My Soul, Your Beats!

生歌を初めて聴いたが、音源と遜色なくて逆に感動が薄いくらい安定感があって透き通る歌声だった。「鳥の詩」では京アニ版『AIR』の映像がふんだんに使われており……ひさしぶりに再見したくなった。「Light Colors」は「プリズムを通した~」という歌詞に合わせ、虹色のレーザーで。「My Soul, Your Beats!」はちょっとアレンジが微妙だったかも。

 

Rita

Little Busters!
・Garugantua
・Alicemagic

炎の演出があった。2曲目は麻枝准作詞作曲の新曲とのこと。
「やっぱりリトバスなんだよなあ……」という嘆息を漏らすしかなかった。ここでもアニメの映像が使われており、シーンの抜き出しが神がかっていた。恭介との別れから救出、エピローグまで。京アニフィルムの持つ“力”には及ぶべくもないが、アニメ版『リトバス』は原作の隙間を埋めるコンテの補完がほんとに素晴らしいということを再実感。去年発売から10周年だったが、自分がプレイしたのは2008年だったので、個人的10周年として再プレイしたい……。

 

Satsubatsu Kids

・Birthday Song=Requiem
・ひきこもりの唄
・Autumn Song

麻枝さんが本当にステージに立っていた。それだけで震えた。大病を患い生死の境をさまよい、きわめて成功率の低い難手術を乗り越え再び姿を見せてくれた麻枝さん。以前にお見かけしたときは『Charlotte』制作発表会のスペシャルゲストとしてだった。あれからもう3年以上が経つ……麻枝さんにも、自分にもいろいろあった。けど、お互いに必死に生きている。“殺伐”とした生きることの過酷を、比喩やオブラートに包むことなく歌う「Satsubatsu Kids」の歌。それを演奏する麻枝さんを見て、ただ「元気そうでよかった」という感想が漏れるのは、歌い手である「ひょん」さんの陽性のキャラクターにもよるのだろう。煽り上手で、気配り上手。ほぼ初対面・男性8割のKeyファンともしっかりコミュニケーションが取れていて、人格者だなあ……と。
2曲目「ひきこもりの唄」ではなんと麻枝さん本人が1フレーズだけ歌唱。「こんな暮らしやめて~結婚なんかしてみて~」という箇所だったのには苦笑したが笑 ともあれ、よかった。

 

riya

メグメル
・一万の軌跡
・小さな手のひら

麻枝准登場というこの日最初のピーク、しかもサウンド的には直球のバンドサウンド、という後に何がくるのかと思っていたら……まさかの「メグメル」ですよ。「リトバス→Satsubatsu Kids→CLANNAD」このつなぎ。完全にこの瞬間「神セトリ」を確信しましたね。「メグメル」のアレンジは劇場版のサントラに入ってる「frequency⇒e ver.」になっていたのが「わかってるな~」と(間奏に即興っぽい演奏が入るやつです)。
そして2曲目には……『ソララド』(CLANNADのBGMアレンジアルバム)から「一万の軌跡」! 正直、riyaさんが歌うのは「メグメル」「小さな手のひら / だんご大家族」くらいだろうと思っていました。まさかの『ソララド』……「今回のセトリが送られてきて、麻枝さんにありがとうメール送っちゃいました」と語っていたので、セトリもしかしたら麻枝さんが考えていたのかも? 「小さな手のひら」は『~AFTER STORY』の素材をふんだんに使い魅せる。もう言わずもがな、という感じ。

 

多田葵

・CANOE
・灼け落ちない翼
・おきらく☆きゅうさい

CLANNAD』パートからの「CANOE」。ここが一番泣きましたね。なんでだろう? 麻枝さんが『リトバス』でいったん引退宣言して、監修という立場に回って初の作品のエンディングだったこともあり……「(次の世代に)バトンを渡す」というKeyのモチーフがこれ以上なく表れた曲でもあり(もともと「旅」というインスト曲のアレンジですしね)。スタッフが代わっても、Keyという旗印はつづいていくんだなあ……ということが壮大な曲調で歌われるのだ。相当な難曲ということもあり、まさかライブで聴けるとは思わなかった。
MCが明るい感じで、本人のキャラには3曲目のほうが合っていた(篝のキャラソン? 知らない曲。バズーカとか撃ってた)。「灼け落ちない翼」は麻枝さん本人の希望でとのこと。同人誌を作るきっかけになったり、『Charlotte』には思い入れがあるので、1曲だけでも関連曲が聴けてよかった……。

 

NanosizeMir

Philosophyz
・ささやかなはじまり

Rewrite曲は正直多いなと感じた。(あとで数えてみたらCLANNADに次いで多かった)

 

Lia(2回目)

時を刻む唄
・星の舟

本編ラストに「星の舟」を持ってくるセットリストを英断と讃えたい! 『planetarian』はKeyの主要スタッフ(折戸・麻枝・いたる)が原作の時点から関わっておらず、2016年のアニメ化時も「なぜ今? とうとう過去作を切り崩すしかなくなったか……」というタイミングだったにもかかわらず、大傑作だった作品(特に劇場版の『星の人』)。このエンディング曲もむろんすばらしかった。Keyの「次代につないでいく」というテーマが「CANOE」にも匹敵するスケールで描かれている……。
時を刻む唄」は、むろん言うまでもなく。

 

〜アンコール〜

Farewell SongLia
・Brave Song(多田葵
・オーバー(riya

どれもよかったが、「オーバー」のイントロが流れた瞬間の盛り上がりにはこの日一番の一体感を感じた。『ソララド』からやるならこの曲をやってほしかったなあ……と思っていたところにこれだったし、ああ、みんなそう思っていたんだなあと。「隠れた名曲」としてコアなファンはみんな知っているので、結果的に有名曲みたいな笑(ちなみにこの曲が挿入歌で使われた伝説の“フラグ折り”回「逆転の秘策」の映像は、前半の『CLANNAD』パートでも使われていました)

だんご大家族(合唱)
・アルカテイル(合唱)

すばらしかった。合唱とか普通恥ずかしいのだが、「だんご」はね……ちなみに他の曲でも、みんなで歌ってほしい、という旨の曲の場合は、映像にテロップが出てました。そのあたりも気配りが利いていたなあと。
このパートが始まる前にこれまでの出演者が総登場したのだが、麻枝さんは来ず。「え〜」という場内の声に、「ひょん」さん「俺が一番『え〜』だわ!(笑)」「麻枝さんらしいよね」と。大人な対応! 最後の全員歌唱での「アルカテイル」でもハモリパート歌ったりして、大活躍だった。めっちゃ好感度上がりましたね。
「アルカテイル」でも映像にテロップが。というわけで歌わせてもらったのだが、これまでKeyの道のりを追体験してきたからこそ「歩き続けることでしか残せないものがあるよ」を自分の喉で歌ったことで、全身にパワーが満ち溢れるような感覚があった。ほんと、「歩き続けることでしか残せないものがある」んだよなあって。

最後に『サマポケ』のロゴ中央にも描かれている蝶の形の紙片が舞う演出もあり、フィニッシュ。記念撮影もあった。

 

以上。新たなKeyの黄金期が始まる……と言ったら、ひいき目に過ぎるかもしれないけど、確かに紡いできたものがあるし、それは新作に至るまで確かに受け継がれている。そういうKeyというブランドの長い「旅」を垣間見たようなイベントだった。

全編にわたって(アニメ化されているものは)アニメの素材が使われているのが豪華。自分の中で、やはり京アニと『リトバス』は別格だなと……『AIR』『CLANNAD』の映像が流れた瞬間は「あ~これだよこれ!」という気持ちになったし、『リトバス』はキャラクターたち自体が愛おしくて。そのあとに続いてきた道も大事だけれど、やはり自分にとっての原点は忘れずにおこうと。

Keyと出会って人生が変わった。京アニから入り憧憬し、『リトバス』で「自分ごと」となり、そのあとはどこか「応援」するような気持ちがあった。そういう個人的な歴史とは無関係に、KeyはKeyで歩みを進めていて、「歩き続けることでしか残せないものがある」という境地に至っている。これからは追いかけるのでも、見守るのでもなく、並び立って歩いていきたい。そう思わせてくれるイベントだった。行ってよかった!