アニメ『Rewrite』のOP/ED映像にPCノベルゲームの歴史を見る

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アニメ『Rewrite』のOP/ED映像が第2話より放映されました。

双方非常に個性的な作りの映像になっていますが、OPの絵コンテを担当したのが「URA AC-Promenade」(以下、URA)さん、EDの絵コンテ・演出・作画を担当したのが「江畑諒真」さん。直接的には天衝監督の過去作『グリザイア』シリーズでOP/EDを担当されたことからのつながりですね。過去作と比較してみるとわかる通り、実質お二方のプライベート作品と言ってよい仕上がりになっています。

 

 

 

「URA」さんは18禁PCゲーム、いわゆる「エロゲ」のOPムービーを中心に手掛けてきた人物で、ニコニコ動画黎明期に人気を博した『いただきじゃんがりあんR』のOPや先述の『グリザイア』シリーズのOPなどを手掛けています。近年ではシャフトの『〈物語〉シリーズ』のOPにもディレクターとして携わっていました。

 

 

 

一方の江畑諒真さんはKeyのデビュー作『Kanon』でシナリオを執筆した久弥直樹さんが原作・脚本に携わったアニメ『天体のメソッド』EDで一躍注目を集め、その後も『アブソリュート・デュオ』OP、『グリザイアの楽園』ED、『ディメンションW』ED、『少年メイド』OPなど絵コンテ・演出・原画をすべて一人で担う「一人原画」にてOP/EDを制作する、作家性の強いアニメーターとして着実にキャリアを積んでいます。

 

 

 

Rewrite』はそもそも原作の時点で『CROSS†CHANNEL』の田中ロミオ、『ひぐらしのなく頃に』の竜騎士07をゲストに迎え、樋上いたる折戸伸治、そして麻枝准というKeyのメインスタッフもそれぞれの立場から携わるまさに集大成的な作品でした。その2ndオープニング(物語の折り返し点で2つ目のOP映像が流れるという演出がなされたのです)にてアニメーションディレクター(氏の公式サイトによると、監督、デザイン、原画etc…を担当したとのこと)を務めたのが天衝さん(当時は「田中基樹」名義)です。

 

 

その後天衝さんは日常系四コマ原作の『きんいろモザイク』、シリアスでハードな内容のPCゲーム原作『グリザイア』シリーズを経て、満を持して『Rewrite』の監督を務めることに。

可愛らしくにぎやかな日常ものとしての前半とシリアスでハードな後半の両面を持つ『Rewrite』に至るまでに、上記の2作品の監督を務めたことはおそらく偶然だとは思いますが、結果として過去のノベルゲーム史を総ざらいするかのような固有名詞の乱舞する作品になっており……「歴史の因果」のようなものの存在を感じざるをえません。

 

 

そうそう、もうひとつ重要な固有名詞を忘れていました。『きんいろモザイク』『グリザイア』シリーズの両作で各話脚本に参加した、髙橋龍也さんです。

知っている人にはもはや当然の情報ですが、髙橋さんは元々ゲームブランド・Leafシナリオライター。過去にはKeyと双璧をなし「葉鍵」とも並び称された同ブランドの初期代表作、『雫』『痕』『To Heart』の企画・シナリオを手掛けたノベルゲーム史に燦然と名を残す重要人物です。

2000年代末以降はもっぱらアニメ脚本家としての活躍が目立っていますが、今回の『Rewrite』参加に際してはご自身にとっても感じ入るものがあったご様子。

 「かつての同僚」ということで真っ先に名前が思い浮かぶのが折戸伸治さんです。いまやKeyの音楽面での「顔」といえる折戸さんですが、もともとはLeaf最初期のメンバーとして『雫』を制作したのがクリエイターとしての原点。折戸さんは「音楽プロデューサー」(シナリオのどのタイミングで原作のBGMを流すべきか、というジャッジを下したりしているのだと考えられます)としてもアニメ『Rewrite』に携わっていますから、打ち合わせなどで顔を合わせることも多いでしょう。

これもまた偶然なのかもしれませんが、形は変われど創作に携わる仕事を続けてきたからこその奇跡……「継続は力なり」の偉大さを、いち視聴者である僕にも強く思い起こさせてくれるのでした。