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再説・無名論的キャラクター論――「蓮實重彥の功罪」から考える

※本記事は2017年に筆者が参加していた講座「ゲンロン 佐々木敦 批評再生塾」第3期で提出した文章を一部改稿の上転載したものです(講座の詳細はこちら)。またオリジナルの文章は、ゲスト講師である宮台真司氏による以下の課題文に応える形で書かれました。 …

『猫狩り族の長』感想 麻枝准の意義ある「変わらなさ」

麻枝准の初となる小説作品『猫狩り族の長』を読んだ。この作品を単体の小説作品として評価することは、自分にはできない。いいとか悪いとかではなく、これまでの麻枝准作品と合わせて読まれるべきものだと思う。 しかし今後この作品を通らずして「麻枝准」と…

『アインシュタインより愛を込めて』感想

PCゲームブランド・GLOVETYの第一作。脚本:新島夕・キャラクター原画:きみしま青・アートディレクション:志水マサトシの3人がメインスタッフとなって制作されている。ちなみにこのトリオが組んで制作された過去作品に『恋×シンアイ彼女』(2015年、Us:tra…

『Summer Pockets REFLECTION BLUE』感想

『Summer Pockets REFLECTION BLUE』を読了。無印版は2年前にプレイ済。 「聖地」直島・男木島には発売前に行ったので、訪問後にプレイするのは初めて。今回の再プレイでは、主人公が舞台となる島に対して覚える「不思議になつかしい」という感覚とのシンク…

そこに「孤独」の位置はあるか?――新海誠とRADWIMPS、そして『天気の子』

0. 新海誠の監督最新作『天気の子』は、「セカイ系」を2019年現在を舞台にポジティブに捉え直した作品だという評を多く見かける。 「君と僕の(恋愛)物語の正否が社会という中間項を抜きにして『世界の危機』のような抽象的な問題と直結してしまう」 これが…

Key ORCHESTRA CONCERT 2019

東京・六本木のサントリーホールで行われた、「Key ORCHESTRA CONCERT 2019」に行ってきた。 Key ORCHESTRA CONCERT 2019〜祝!20周年。最大の感謝と感動をあなたへ〜 | 株式会社アイムビレッジ 言いたいことはたったひとつ。 息が止まった。何が起きているか…

レクイエム・フォー・イノセンス――『リトルバスターズ!』との10年

本稿は、サークル「Rhetorica」の発行する雑誌『Rhetorica#04』に寄稿したエッセイを編集部の許可を得て転載したものです。『Rethorica#04』の特設サイトはこちら。 大学に入学した2007年、僕は決定的な一作に出会った。京都アニメーション制作によるアニメ…

「セカイ系」と「批評」についての覚え書き

1. 約一年前、「批評再生塾」なるプログラムに参加していた自分はその課題として「『セカイ系批評』再生宣言」なるものを書いた。そこでは「セカイ系」と「批評」との相同性を指摘することで「セカイ系」という語に込められたイメージを刷新し、その「公共的…

『ゾンビランドサガ』VS『SSSS.GRIDMAN』 2018年「現実へ帰れ」は有効なのか?

2018年秋クール(10月~12月放送)のテレビアニメとして話題をさらっていった2つの作品、『ゾンビランドサガ』と『SSSS.GRIDMAN』。この両作品が先日、あまりにも対照的すぎる最終回を迎えた。比較することで際立つのは、両作品において「現実」と「アニメ(…

オタクじゃ新条アカネは救えない

なぜオタクは新条アカネに夢中なのか 『SSSS.GRIDMAN』が盛り上がっている。とりわけ本作のダブルヒロイン(とされている)のうちのひとり、新条アカネには少なくない視聴者からの熱視線が注がれている。下記の記事に典型的なように、「スクールカースト最上…

アニメ『色づく世界の明日から』オープニングテーマを担当する、ハルカトミユキの「オルタナティブ」な魅力

P.A.WORKSの新作アニメーション作品『色づく世界の明日から』の放送がスタートした。同スタジオらしい透明感のある映像表現、「色のない世界に生きる少女が、祖母が自分と同年代だった時代にタイムスリップする」という筋書きからどのような繊細なドラマが紡…

『Summer Pockets』感想

(2020.07.25追記)シナリオ追加・演出強化などのアップデートがなされた『Summer Pockets REFLECTION BLUE』が2020年発売された。感想記事は以下。 ※以下、『Summer Pockets』本編のネタバレありにつき注意。 6月29日に発売されたKeyの新作『Summer Pockets…

アニメ『刀使ノ巫女』がすごかった。

アニメ『刀使ノ巫女』がすごかった。完璧、100点満点すぎて書くことがないくらいなのだが、残念ながら一部熱狂的ファン以外には知られていないのが現状であるようなので、記録のためにも書いておこうと思う。まず話の展開が面白い。ある剣術の大会の決勝で、…

約束と呪い――「Key」と「久弥直樹」の差分として読み解く「麻枝准」

本テキストは、2015年に刊行した合同誌『Life is like a Melody―麻枝准トリビュート』に寄稿した文章を一部改稿したものです。同書が品切重版未定であることから、編集長・meta2氏の許可を得て転載します。 「麻枝准」の作家性について直接言及することは実…

「批評再生塾第3期」の修了と、この一年で僕自身に起きた変化について

批評再生塾というプログラムが終わってから振り返りのエントリを書いていなかったので(前回の投稿は最終課題の提出前)。 最終講評会がさる4月13日行われ、その模様はYouTubeで見ることができる。 いろいろな要因があったとは思うが、結果的に自分は最終の6…

「KSL Live World 2018」に行ってきた

5月6日、ゲームブランド・Keyの楽曲が披露されるライブの今年度版、「KSL Live World 2018 ~Summer Pockets & Key's Best Night~」に行ってきた。(公式サイト) 「神イベント」とはこのことか、と思った。 今年は新作ゲーム『Summer Pockets』が発売され…

「中動態的家族」の誕生――『Charlotte』に見る新たな「約束」のかたち

※本稿は「ゲンロン 佐々木敦 批評再生塾」第3期の國分功一郎さんゲスト回にて提出した評論文を改稿したものです。 1. 2010年代の終わりもいよいよ見えてきた今年の初め、あるひとりの音楽家の突然の引退会見が世間に波紋を投げかけた。 小室哲哉。90年代に一…

「批評」ってなんだ。

sr-ktd.hatenablog.com このエントリから気づけば半年以上が経っていた。 ゲンロン批評再生塾第三期。いよいよそのフィナーレを迎えようとしている(まだ最終課題の提出が残っているが)。 結果的には全15回中、2回登壇(蓮沼執太回、宮台真司回)。うち1回…

アニメ版『リトルバスターズ!』の「児童文学性」――脚本家・島田満さんを悼んで

脚本家の島田満さんが亡くなられた*1。島田満さんといえば、私にとっては何といってもアニメ『リトルバスターズ!』シリーズの構成・脚本を務められた方だ。私が『リトバス』に抱いている特別な思いについては以前にも書いたことがあるが、そこで書ききれな…

「観客の再発明」を超えて――「ポスト観客」時代の映画と「物語」(改訂版)

※本稿は「ゲンロン 佐々木敦 批評再生塾」第3期の渡邉大輔さんゲスト回にて提出した評論文を改稿したものです。 邦画の興行収入歴代2位という記録を塗り替えた『君の名は。』を筆頭に、「アニメ映画の当たり年」と言われた2016年。それら「当たり年」の諸作…

「Long Long Love Song」

熊木杏里さんのライブ「An’s meeting ~Long Long Love Song~」に行ってきた。7月に麻枝准×熊木杏里の名義で発売されたアルバム『Long Long Love Song』の再現ライブ。セットリストはアルバムの曲順通り。当たり前のように素晴らしく、ライブで音源の印象か…

アニメ『終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?』感想

『終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?』(以下『終末~』)というアニメは大層エモーショナルだったのだけど、じゃあなんでこの作品が僕の心にビシバシ刺さったのかを考えるにつけ、「原作ものの良いアニメ化とはどういうもの…

なぜ人が『Fate/Grand Order』の話をしていると僕の心はざわつくのか

タイトル通り。ぱっと思いつくかぎりで理由を箇条書きにしてみる。 なんかKeyが負けた感じがする ゼロ年代批評って無力だったのだなと突き付けられる やり始めた人が知らない言葉を話すようになるのが怖い 原作(stay night)が好きだからこその複雑な気持ち…

「批評再生塾」参加のご報告とか

気づけば3ヶ月もブログを書いていなかった。 ひとつには書くほどの題材がなかった(逆をいえば「題材」がなければブログを書いてはいけないという思い込みがあった)というのと、もうひとつはとある理由によりネタを小出しにするべきではないと考えていたか…

異形のアニメ『ハンドシェイカー』のここが凄い

今期ぶっちぎりで面白いアニメがある。 『ハンドシェイカー』。 正直つい先週まで全く歯牙にもかけていないアニメであった。キービジュアルを見て「クセのあるキャラデザだなあ」と思っていたくらい。 TVアニメ「ハンドシェイカー」公式サイト しかしふとし…

28 (orbital period)

12月30日に28歳になってしまう。恐ろしいことだ。だってロックスターとして死ねなかったことを意味するのだから……しかしカート・コバーンにしてもジム・モリソンにしても、それまでに死後讃えられるだけの伝説と逸話を遺したからこそ歴史に刻印されているわ…

映画『聲の形』感想

映画『聲の形』を観た。鑑賞後初めに思ったのは、この映画は「差別」や「いじめ」についての映画ではなく、むしろそれらがなぜ起きてしまうのか、ということを問題にしている映画だということだ。結論からいえばそれは「聴こえる/聴こえない」「話せる/話…

『君の名は。』感想

11月某日、結局『君の名は。』を観た。以前「金輪際能動的に観ることはないだろう」などと書いたが、そうはならなかったことをお許しいただきたい。ただ「嘘をついた」という感覚もなくて、この記事を書いたときとは状況が変わったというのがある。それはRAD…

『planetarian〜星の人〜』鑑賞記録――「Key」とは何か

映画『planetarian〜星の人〜』を観てきた。Keyとは何か、ということについて、とても示唆深いものを与えてくれる映画だった。 『planetarian』の原作には麻枝准・樋上いたる・折戸伸治、どの名もメインスタッフとしてクレジットされていない。でもKeyの作品…